【感想】「校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール」西郷孝彦

この本をオススメしたい人

学校に行くのが嫌で嫌で苦しいと思っている学生さん、その親御さん、学校の先生、教育委員会の皆さん、小さい子どもがいる人、今とこれから学校に関わるであろう人みんな。

そして、学校という存在がこれからあるべき姿はどんなものであるのか、気になる人。

制服も校則も定期テストもない学校がどのように運営されているのか興味ある人。

校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール 定期テストも制服も、いじめも不登校もない!笑顔あふれる学び舎はこうしてつくられた [ 西郷 孝彦 ]

価格:1,540円
(2021/2/8 10:40時点)
感想(3件)

どんな本?

私がこの学校の存在を知ったのはNHKの番組で、でした。

こんな学校あったんだ!しかも公立!しかも民間からではなくて普通に教師から校長になった人!の下で。

この学校はないものづくし。

制服ない・校則ない・定期テストない・登校時間も決まってない・教室に絶対にいる必要はない・チャイムならない・先生の怒声もない…。

校長室にはいつも生徒が入り浸っている…。

気になりすぎて色々調べてみて、この本にたどり着きました。

西郷校長が教師生活の中からどうやって今のような考えになったのかという事、荒れた学校で規則でガチガチだった桜丘中学が今に至る経緯、新しい学校の在り様がこの桜丘中学から広まっていって欲しいものです。

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感想(3件)

 

この本で分かるコト

  1. 校則・制服・定期テストをどうやってなくしたのか
  2. トップにならなきゃ変えられない
  3. 学校におけるソフト面のユニバーサルデザイン

1.校則・制服・定期テストをどうやってなくしたのか

西郷先生は、2010年に校長として桜丘中学に赴任しました。当時は、学校関係者からいわゆる”元気な中学校”と言われる学校であったそう。

朝礼では先生たちの怒声が響き渡り、教員と生徒は一触即発…、軍隊のように生徒を押さえつけて秩序を保たせようとしていたと。

特に初年度の修学旅行の話が面白くて(面白がってはいけないのだろうけど…)、京都駅の構内で生徒たちに怒鳴っている教員の方がよっぽど周囲の迷惑で、正直恥ずかしかったという西郷先生の正直な気持ちが好きです。

こういう状況は、現在でも他の学校では当たり前にある日常なのではないかな、と思います。

そこで、西郷先生は何をしたのか…。まずは、朝礼で騒いでも注意するのをやめました。生徒が騒ぐのは自分の話がつまらないから、だからと。

生徒が聞いてくれるような話を準備して、「上から目線で生徒を威圧するのはやめましょう」と言い続け、徐々に怒鳴り声は減っていったそうです。

これは単に、怒鳴らなくても朝礼が静かになって良かったね!という話ではありません。

教師の側には、朝礼ではきちんとさせなければいけないという暗黙のルールがあり、生徒の側は静かにしていなくては先生に叱られるから静かにしようとする。

さて、なぜ朝礼では静かにしなくてはいけないのだろう?と考える人はこの両者にはいません。なぜ静かにしなくてはいけないのか…、先生にも生徒にも自分で考えてもらいたかったと西郷先生は考えているのです。

それと同じ事が制服でも、言えます。靴下の色は校則で白と決まっていました。なぜ白なのか、セーターの色はなぜ紺なのか、派手ではない恰好とは何か、中学生らしい服装とは何か…。西郷先生と、生活指導主任の先生とのやり取りがコントみたいに思えてきます。

制服でなければいけない理由が誰にも答えられないのならば、制服を着る意味はありません。そうやって、靴下の色から一つひとつ疑問視していき少しずつ校則を変えていって、今では校則が全てなくなったのです。

ただひとつ、校則がないからと言ってなんでもありではもちろんありません。桜丘中学校では学校の窓ガラスを割ってしまったような時には故意であろうがなかろうが、弁償です。

生徒が教員に暴力を振るっても、先生が生徒へ体罰をしても傷害事件として警察に届けるのだそうです。何かが無くなった時も警察です。

こういう事は社会に出れば当たり前のことですが、学校に警察を入れる事を学校は本当に嫌がりますよね。学校だからといって、なぜそれが許されるのでしょう。

2.トップにならなきゃ変えられない

西郷先生は、民間出身の校長ではありません。ずっと、教員をやってきて校長になり桜丘中学校に赴任しました。

教員生活の中で、ある校長先生がまだ若かった西郷先生に学年主任を任せ、ことあるごとに教育関係者や教育委員会の人にも引き合わせてくれたのだそうです。それがなければ、教員としての勉強をしたり、校長を目指そうと思ったかどうか…と書かれています。

結局、管理職でなければ何かを変える事ができないのはどんな組織でも同じだと思います。だから、桜丘中学でも若い先生にどんどん大役を任せ、「将来、管理職を目指しなさい」と言い続けるのだそうです。校長や、教育委員会でも教育界を変える事ができます。

桜丘中学校で生徒に素の人間力で向かい合っている先生たちが、全国に散らばって日本の教育を変えて欲しいと本当に思います。

3.学校におけるソフト面のユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザインというのは皆さん知っていると思いますが、高齢者や障害のある人も使いやすい空間や製品のデザインという事です。エレベーターやエスカレーターは、障害のない人にとっても便利なモノだし、結果的にどんな人にも使いやすいデザインになります。

それを学校にも取り入れようという事なのですが、それを学びのユニバーサルデザインなどとも呼ぶそうです。

発達障害、知的障害、帰国子女、不登校、など「困難を抱えている生徒」に合わせた教育が、誰にとっても学びやすいという事になるのではないかという事です。

例えば、桜丘中学では教室の前方の壁には掲示物を貼っていません。発達に特性のある子からすると、その掲示物に気を取られ授業に集中できなくなったりするためです。

これは、そのような特性がない子にとっても、より集中しやすい環境になっていると言えると思います。

他には、「ディスレクシア」という文字が読めない障害を持ったFくんのために読み上げソフトが入ったタブレットの持ち込みを許可して欲しいという要望があった時の事。

Fくんは自分の校区の中学からは持ち込みを断られ、桜丘中学に相談にきていました。西郷先生は、Fくんにはタブレットが必要⇒でも特例で認めると他の子から文句が出る⇒とりあえずF君のクラスは全員タブレット持ち込み可にするという処置をとりました。

始めは他の子もタブレットを持ってきてゲームをしたりしていたけれど管理が面倒なので、結局必要のあるFくん以外は調べものなど特別な場合を除いて持ってこなくなったのだそうです。

そして、この件をふまえて全校持ち込み可になりました。結果としてFくんだけでなく、他の子にとっても学びやすい環境になったと言えるのではないでしょうか。調べものにはタブレットなどは大変便利なのですから。

学校は人を思考停止させる場

この本を読んで考えたのは、一体いつの時代に作った制度を、何のために後生大事に変えずに今まで機能させているのだろう…という事です。なぜ制服を着るのか、なぜ一糸乱れず整列させるのか、なぜ面白くない授業を面白くないと言ってはいけないのか、なぜ先生の言う通りにしなくてはいけないのか…。

考えた事なかった…。私は先生を困らせない良い子ちゃんだったので、完全に思考停止していました。先生の側も思考停止。

学校って人を思考停止にさせる場所なの?先生のいう事を聞く、勉強ができる子が優等生です。優等生ってなんや。何に対して優等なんや。

思考停止から我が子を守りたい

今の社会では誰かの言う通りに動くだけみたいな、そんな人材求められていないし、これからはもっともっとそうなります。

親の世代が通った学校と、いやいや祖父母の世代が通った学校とほぼ同じなんてそんな事どう考えてもおかしい。

自分の子どもも桜丘中学校に通わせたいけど、そんな学校近くにはありません。家庭で思考停止の呪いから子どもを守るしか今のところなさそうです。

校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール 定期テストも制服も、いじめも不登校もない!笑顔あふれる学び舎はこうしてつくられた [ 西郷 孝彦 ]

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