【感想】在宅ひとり死のススメ 上野千鶴子 認知症 介護 介護保険
「在宅ひとり死」というパワーワード
上野千鶴子さんは1948年生まれの社会学者。東大名誉教授。ご自身は京大で博士になられています。
今では「おひとりさま」という言葉も当たり前に使われていますが、上野さんが2007年に出された「おひとりさまの老後」という本から始まったと言っても過言はないようです。
それからおひとりさまシリーズが続き、最新作がこの「在宅ひとり死のススメ」です。
在宅で…ひとり死…、それって孤独死とどう違うの?そもそもそんな事可能なの?
題名だけで色々疑問が湧いてきます。
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ひとり暮らしの高齢者は増えているし、これからもっと増える
ひとり暮らしの高齢者は年々増えているそうです。身近でも子ども世帯と同居というのは少なくなった印象をお持ちの方が多いのではないでしょうか。
単身になった親を子どもが引き取らなければならないという風潮も薄れてきたように思います。施設に親を入れたとしても、みんなそうだよね、と特に批判される事も少なくなったのではないでしょうか。
ところが、政府としては在宅での介護を推進する方針であるようで…。それは、やはりお金の問題という事につきるようです。
ひとり暮らしの高齢者は本当に不幸なのか
高齢者がひとり暮らしと聞くと、寂しいのでは?とか話し相手もいないのは可哀そうだとか否定的なイメージがやはり湧いてしまいます。
しかしこの本では、それは違うというデータが紹介されているのです。限定的な調査ではあるものの、ある程度のお金がある世帯では、独居がもっとも満足度が高く、不安も少なく、悩み度も低いという衝撃の結果。
もっと衝撃なのはふたり世帯の満足度が最低だという事。ふたり世帯とは、配偶者とふたり、子どもとふたり、のパターンあり。
衝撃ではあるんですが、でもそれも、よく考えれば周りでも聞く話。夫婦ふたり世帯の妻のストレスが半端ないというのは、本当によく聞きます。
やはり家事をしない夫が多いからでしょうかね。熟年離婚が多いというのも、最近はやりの卒婚という考え方も、ふたり世帯のストレス値の高さというのを物語っている気がします。
一方ひとりであれば家事もひとり分、何をしようがしまいが誰からも何の文句も言われないし、自由なのです。
そりゃあ満足度も上がるよねという話です。
でも、元気なうちは良いけれど介護が必要になったらどうするの?という事です。
世界的に見ても優れた、介護保険という味方
一言でいってしまうと、介護保険を使えば、認知症でも体が不自由になっても家でひとりで暮らして死ぬまでいけるという事。
詳しくはこの本を読んでいただきたい。誰もが皆、病院や施設に行きたくはないのです。本音では長年住み慣れた地域にある自宅で、死にたいと思っているのです。
上野さんには子どもがいません。子どもがいない方の方が自分の老後について本気で考えている印象が私にはあります。
やはり子どもがいる人たちは、最後は子どもがなんとかしてくれると甘い考えがあるのではないかなあ。自戒を込めてそう思いました。
ワタシも目指したい在宅ひとり死
この本を読んでいると在宅ひとり死が最高の死に方だと思えてきます。家でひとりの時に死んだって、早めに見つけてもらえれば問題ないのです。孤独死にはなりません。
死ぬ時はどうせひとりです。それまでどう生きるか他人の手も、少しの子どもの手も借りながら自律した生活を送りたい、自由に。
国が在宅を進める動機がお金だったとしても、家にいたいという人の希望とは合致しているのだから、それで良いと思います。
すべき事は、介護保険がこれ以上改悪されないように、目を光らせておくことです。
歳をとったら、ひとりの自由気ままな暮らしが死ぬまで続くと思えば何だか楽しみになってきます。
まあ、ある程度のお金と友だち、コミュニケーションスキルが必要にはなるのでそこは磨いておかねばいけませんね。
上野さんの文章は平易でテンポもよく楽しくあっという間に読めます。そして老後への不安が少し減ります。高齢者の方も、30,40代の方も親や自分の老後の生活を考えるのに最高に役立つと思いますよ。
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