【感想】「君たちはどう生きるか」 吉野源三郎

君たちはどう生きるか吉野源三郎

マガジンハウスからマンガ版が発売され半年あまりで200万部突破というベストセラーになりましたね。池上彰さんや、宮崎駿さんも愛読していたそうです。

コンビニでも見かけます。もともと難しい言葉で書かれているわけではありませんが、マンガになると、より幅広い層の人が読んでくれるのでしょうね。小学生でも分かりやすそうです。

「作品について」より要約

もともとこの本は「日本小国民文庫」の中の一冊です。この文庫シリーズは、1935年に山本有三の「心に太陽をもて」が出てから、だいたい毎月一巻ずつ発売され1937年に出された、この「君たちはどう生きるか」で完結しています。

美智子様も読んでいらしたとか。というか、当時の学生たちは、このシリーズくらいしか新しい本を読めなかったのかなあ、と思います。

1935年というのは国内で軍国主義が日ごと強くなった時代であり、世界でもムッソリーニヒトラーが政権をとり暗雲が立ち込めていた時代でもありました。

出版の自由が制限されていく中で、少年少女たちに自由で豊かな文化を伝えたいと創刊したのだそうです。「君たちはどう生きるか」も山本有三が書くつもりでいたのですが、目の病気になってしまったため、吉野さんが書いたということだそうです。

子どもたちのために

軍国主義が生活の中にもしみ込んでくる毎日というのは想像するだけで恐ろしいです。読みたいものも読めない。言いたい事も言えない。そんな現実を私の祖父母の世代は経験してきたのだと思うと他人事には思えません。

特に子どもたちは、その時にあるものしか知り得ません。軍国主義のみしかなければ、それしか選択肢はないじゃないですか。他の文化や考え方もあると大人が教えてやらなければ。

存在自体を知らない物事を、知ろうとするのはとても難しいことです。知らない事は、その人にとって存在しないのと同じです。

太平洋戦争が始まってからはこの本ですら刊行できなくなったそうです。自分たちも含め、この先の世代にもそんな経験はして欲しくないなぁ。まあ、今はインターネットがありますから、同じ状況というのにはなりにくいのかなとは思いますが。

本の内容

内容は、コペル君こと中学二年生の本田潤一が母方の叔父さんとのふれあいの中や学校生活の中で感じた事と、それにこたえる叔父さんのノートという形式で進んでいきます。

モラルについてだけ書かれている訳ではなく、社会がどのように成り立っているかや、人や本が言っている事を鵜呑みにせず自分の頭で考える事などなどが中学生のコペル君に身近な題材をとって、分かりやすく展開していきます。物語の形なのもとても読みやすいです。

精読しなくては…反省

さらっと読めてしまうのだけれど、本当の意味を理解するのはかなり難しそうです。私も今回この本を見返してみて全然理解できてないと分かり、アゴがはずれそうになりました。やはりただ読むだけではだめですね。

何冊読んだと自慢してみても、この一冊もきちんと理解していないのなら何の意味もありません。それこそ時間の無駄。大反省中です。とにかく、読み直します。

まだ読んだことがない人も、大昔に読んだきりという人も、時間がある今こそ読んで、この普遍的で、誰にでもある問いに向き合ってみるのもいいんではないでしょうか。

あなたはどう生きるのか。