【感想】「絶望名人カフカの人生論」 カフカ 頭木弘樹 編訳

ブログで紹介されていた

ミニマリストになりたい秋子のブログ」で紹介されていたこの本。絶望名人って…面白そうだなーと読んでみたら、すっごく面白かったです。

「絶望名人カフカの人生論」 カフカ 頭木弘樹 編訳 

カフカの残した手紙や日記からこれはと思う名言を、将来・世の中・自分の身体・親などのカテゴリーに分類して紹介した本です。

すべてがネガティブです。暗いです。絶望しています。自分が絶望していない時に読むと、絶望も行き過ぎると滑稽さが出てくるんだなと感じるんですが、自分が絶望していたらどうなんだろう。

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感想(1件)


つらいときにはつらさに浸る

「はじめに」にも書いてありますが、本当につらくて落ち込んでいる時には、家族や友人からの励ましの言葉もしんどいと思いますよね。

相手は自分の事を気遣ってくれているのだろうけど、心の中では反発してしまったりして。「やればできる」的なことを言われても素直に聞けません。ポジティブがいつも善とは限りません。

それよりも、「そうなんだね、そうだよね。」と頷いてくれるだけの方がいいかな。

それでも、全て理解してくれた!とは思えないだろうなあ。そんな時にはこの本を読みましょう。いくら自分が絶望していてもカフカにはかなわないと思えます。

カフカの絶望がくだらないと思える頃には、自分のつらさも少しはマシになっていそうです。

実存主義の先駆者

カフカ自身について私はあまり知らなくて。「城」と「変身」ぐらいは読んでいましたが…。

「変身」の方が楽しかったです。ある朝目覚めたら虫になっているという発想そのものもそうですが、その虫が部屋の中で新しい這いまわり方を探しているというような文を読んだとき吹き出してしまいました。新しい這いまわり方ってなんやねん。

カフカが書こうとしていたのは新しい小説です。死後、世界で認められたカフカですが、カフカに影響を受けたと公言している作家や、映画監督、漫画家などがたくさんいます。

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感想(22件)

カフカ自身は自分の小説に納得がいってなかったみたいですね。最後まで納得することなく結核で死んでしまうんですけどね。

手紙や遺稿が世に出るまでの経緯に感動する

カフカユダヤ人でしたから、死後ナチスが台頭しユダヤ人の迫害が始まると、遺稿や手紙を守るために友人や婚約者などがどんな苦労したか、という経緯も書かれています。

カフカは労働者傷害保険会社で働いている時も仕事ぶりを評価されて出世しているし、自分の死後、命がけで手紙や遺稿を守ってくれる人たちにも恵まれています。

それはカフカの人柄ゆえだろうと思うのですが、こんなにネガティブな良い人って面白かっただろうなー。会ってみたいなと思います。

絶望のひとつをご紹介。

「いつだったか足を骨折したことがある。生涯でもっともうつくしい体験であった。」

こんな感じの絶望が86個。

著者の頭木さん

大学3年生の時に突然難病と宣告された。医師からは「一生治らない」と言われ、13年の間入院か自宅療養の日々が続いた。

これが頭木さんの絶望の始まりです。大学3年生なら、20歳か21歳。そこから30過ぎまで、ずっと療養生活。

どれだけ苦しくつらい日々だったかという事は、ご本人にしか分かり得ませんが、絶望して当たり前の状況であった事は確かです。

友だちはみんな就職して、働いたり、恋愛したり、趣味を楽しんだり旅行に行ったり…。なのに自分は稼ぐことも、外出することさえもままならなかったりする。

焦るし、悔しいし…絶望しかない、本当に絶望するしかない日々。

そんな日々に一番寄り添ってくれたのはカフカの言葉だった、という悲しいような寂しいような本当の事。

結局、我が身の事にならなければ誰かの辛さを理解することなんてできないのだと思います。絶望は自分1人で抱えるしかない。全く同じ立場の人がいないのなら。

しかし、頭木さんはその後、病状が改善し色々な活動を始めます。今でも完治はしていないそうですが、本を出したりラジオやテレビに出たりと大活躍です。

頭木さんの他の本

「絶望読書」

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「絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ: 文豪の名言対決 」

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絶望している人も、していない人も万一の時のため

この本を読んで、私は今まで本当の意味で絶望したことなんてないと思いました。それは幸せなことであると同時に、絶望した人の気持ちが分からないという事も意味していて、少し悲しくなりました。

今、絶望のただ中にいる人には最高の理解者となり寄り添ってくれる本です。

まだ、絶望したことがないという人には、その時に備えて読んでいて欲しい。

これから先の人生には絶望が待っているでしょうか。頭木さんも言うように絶望する前から絶望の文学を読んでいようと思います。