【感想】「なんで僕に聞くんだろう。」幡野広志 ガンと写真と人生相談
この本をオススメしたい人
昔から、ガンになった人の書いたものに反応してしまう。その人そのものが、ガンになった生活を書くことで大きく浮かび上がってくる。それも、これ以上ないほど突き詰められた状態で。
その極限をみる事で、今度は自分自身に突き付けられる。お前はこんな風に生きられてるのか?って。
病気にならなくたっていつ死ぬか分からないのは皆同じはず。
ガンになったおじさんに、人生相談って…なんで僕に聞くんだろう。秀逸なタイトルだと思うんです。確かにそうだよねって。そこに納得してくれた全ての方にオススメです。
どんな本?
「なんで僕に聞くんだろう。」幡野広志 幻冬舎 2020.2.5
写真家である幡野さんは2017年34歳で多発性骨髄腫を発症し、余命3年と宣告されました。長男が誕生した矢先。治る見込みはないそうで、あと数年の命だと覚悟されています。
ガンになった事を公表すると、励ましや宗教の勧誘、健康食品や高額の治療法の勧誘などにまじって、少なくない量の人生相談のメッセージが届いたそう。
ツイッターで答えてはきたそうですが、字数制限がある中で答えるのは難しいという事で、webメディアであるcakesにて連載を開始。この本はその連載の中から選び、加筆修正した37の人生相談とその答えです。
答えは厳しいものも優しいものもありますけど、全て自分の息子さんが相談して来たら…と仮定して答えているそうなんですね。だから、ものすごく相談者さんの事を考えているのが分かります。
幡野さんから、将来の息子への手紙という一面もあると思うと泣けてきます。
しかし、語り口が本当に面白い!
恋愛や不倫の相談が多いらしいですが、不倫の相談などは不倫しまくっている知り合いのお坊さんを紹介したいとか…吹きました。
写真もあいだにあります。装丁もシンプルで格好いいので、ぜひ手に取って頂きたい!
この本で分かるコト
- 批判と非難は全く違う
- 病気になった家族にどう接すればいいのか
- 波乱万丈マウンティングはつまらない
1.批判と非難は全く違う
批判・・・「それ」について知らないからこそ起きるもの。「疑問」のようなもの。
情報発信や作品についての批判は、精度や質を高める養分。批判に反論できるようになると良い。だが、反論しても相手が納得することはまれ。その内容を周囲の人に理解してもらうために反論すると自分が伝えたい情報がより多くの人に伝わる。
非難・・・中傷や、批判のように見える巧妙に隠された妬み、批判より圧倒的に多い。
「うらやましい」が「ズルい」や「ムカつく」に成長してしまうと、非難になってしまう。
そうやって、非難してくる人に対してどんな対応をすればよいのか…。ちゃんと答えを出してくれています。
2.病気になった家族にどう接すればいいのか
ガンのような病になっても、すぐに死んでしまうというのはマレな事だと思います。闘病の間、毎日顔を合わせる家族にとれば励ましたいと思って口にしてしまうかもしれない「頑張れ」という言葉。
やはりそれは、言っちゃいけない言葉なのだそうです。言う方には悪気がない事がほとんどでしょうけど、そういう言葉が一番人を傷つけるものかもしれません。
じゃあどう声を掛ければいいのか?それは、自分で探しなさいと幡野さんアドバイスしています。病気になったとか関係なく、家族はどうして欲しいと思っているのか考えてくださいと。
「頑張れ」という言葉は家族にとっては、「私のために頑張って欲しい」という事なのかも知れません。本人はどう思っているのか良く聞くことが先決ですね。
いざという時できるかな…。できるといいな…と思うし、家族もそうしてくれればいいな…と思います。
3.波乱万丈マウンティングはつまらない
波乱万丈マウンティングしてくる人って、結構たくさんいるんですかね。そう言えば、私の周りにも何人か…。確かに波乱万丈話はつまらない。それにその話もう100回は聞いてるしね。
聞いて欲しければ、面白い話にしてって、本当にそう。
悩みがある人もない人も
読んだら考え込んじゃいます。なんで、この年でこんなに多様な事にきちんと答えられるのだろうって。誰でも口にしそうな一般的な言葉ではなく、本当に質問者さんの事を考えて答えられるのだろう。
私はこんな事を考えて生きていない。明日も明後日も何年先もずっと元気で生きているという前提のもとに今日を生きているから。未来に向かって生きているから。
それはアドラーが言うように人生最大のウソなのかもしれません。全ての人には今しかない。私にも。幡野さんにも。あなたにも。